モリブデン
特 徴
2600℃の高い融点
高温での機械強度
電気伝導性、熱伝導性良
化学的性質 | 水 | 反応せず。 |
水蒸気 | 約700℃で酸化を始める。 | |
空気、酸素 | 室温で酸化が始まる。500℃以上でMoO3を形成し急激に酸化する。 | |
水素 | 反応せず。 | |
炭素 | 900℃で脆化を始め、1300~1400℃でMo2Cを形成する。 | |
一酸化炭素 | 約1000℃から炭化物を形成する。 | |
二酸化炭素 | 約1200℃から酸化物を形成する。 | |
アンモニア水 | 室温でわずかに反応する。 | |
ハロゲン | 室温で弗化物を形成する。250℃で塩化物を形成する。沃素とは赤熱状態でも反応しない。 | |
硫化水素 | 約1200℃で硫化物を形成する。 | |
硫黄 | 600℃以上で硫化物を形成する。 | |
亜硫酸ガス | 赤熱状態で酸化する。 | |
窒素 | 600℃以上で脆化が認められ約1500℃以上で窒化物を形成する。 | |
塩酸 | 加熱希塩酸に徐々に溶ける。 | |
硫酸 | 室温から110℃濃硫酸に徐々に溶け、200~250℃ですみやかに溶ける。 | |
硝酸 | 容易に溶ける。 | |
苛性ソーダ | 水溶液に殆ど影響されない。溶融塩とは急速に反応する。 | |
亜硝酸ソーダ | 溶融塩に急激に溶解する。 | |
王水 | 室温で溶け、加熱すればすみやかに溶ける。 | |
弗酸 | 室温でわずかに溶ける。 |
物理的性質 | 原子番号 | 42 |
原子量 | 95.94 | |
結晶構造 | 体心立法格子 | |
融点(℃) | 2620±10 | |
沸点(℃) | 4827 | |
密度(g/Cm) | 10.2 | |
比熱(20から100℃)kJ/kg | 0.24 | |
熱伝導度(W/mK) | 0℃/134 | |
20℃/155 | ||
1000℃/105 | ||
1600℃/67 | ||
線膨張係数 | 27℃=5.1×10-6/℃ | |
1000℃=5.5×10-6/℃ | ||
2000℃=7.2×10-6/℃ | ||
蒸気圧 | 1500℃=8.53×10-7Pa | |
1800℃=5.47×10-5Pa | ||
2000℃=5.47×10-3Pa | ||
2500℃=1.33Pa | ||
蒸発速度 | 1427℃=1.1×10-10Kg/(m2・s) | |
1727℃=5.3×10-8Kg/(m2・s) | ||
2127℃=1.8×10-5Kg/(m2・s) | ||
2527℃=1.04×10-3Kg/(m2・s) | ||
電気比抵抗 | 0℃=51.7nΩ・m | |
27℃=57.8nΩ・m | ||
1127℃=352nΩ・m | ||
1527℃=472nΩ・m | ||
2327℃=718nΩ・m | ||
電気比抵抗の温度係数 | 5.0×10-3/℃(0~170℃) | |
ヤング率 | 330kN/mm2 | |
剛性率 | 138kN/mm 2 | |
ポアソン比 | 0.324(27℃) |
タングステン
化学的性質 | 水 | 反応せず。 |
水蒸気 | 赤熱状態ですみやかに酸化する。 | |
空気、酸素 | 室温でわずかに酸化(変色)する。 約400~500℃で酸化し始め、700℃以上でWO3を形成し急激に酸化する。 |
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水素 | 反応せず。 | |
炭素 | 約800℃より吸収し始め脆化する。1400~1600℃でWCを形成する。 | |
一酸化炭素 | 約850℃より脆化、し役1000℃から炭化物を形成する。 | |
二酸化炭素 | 約1200℃から酸化物を形成する。 | |
アンモニア水 | 室温で反応せず。 | |
ハロゲン | 室温で弗化物を形成する。250℃~300℃で塩化物を形成する。 赤熱状態で臭化物を形成する。熱状態で沃化物を形成する。 |
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硫化水素 | 赤熱状態で表面反応が起こる。 | |
硫黄 | 赤熱状態でわずかに反応する。 | |
亜硫酸ガス | 赤熱状態で酸化する。 | |
窒素 | 約2300℃以上で窒化物を形成する。 | |
亜硝酸ガス | 赤熱状態で酸化する。 | |
塩酸 | 室温で反応せず、約100℃で希・濃塩酸にわずかに溶ける。 | |
硫酸 | 室温で希硫酸に反応せず、濃硫酸にわずかに溶ける。 加熱希硫酸にわずかに溶け、加熱濃硫酸に溶ける。 |
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硝酸 | 室温でわずかに溶ける。 | |
水酸化ナトリウム | 水溶液にわずかに溶ける。溶融塩とは急速に反応する。 | |
亜硝酸ソーダ | 溶融塩に急激に溶解する | |
王水 | 加熱溶液に溶ける。 | |
フッ化水素酸 | 室温でわずかに溶ける |
物理的・ 機械的性質 |
原子番号 | 74 | |
原子量 | 183.85 | ||
結晶系 | 体心立方晶 | ||
融点 | 3387℃ | ||
沸点 | 5527℃ | ||
融解熱 | 190.3kJ/kg | ||
密度 | 19.3Mg/m3 | 20℃ | |
比熱(20~100℃) | 0.14kj(kg・K) | 20℃ | |
0.14kj(kg・K) | 100℃ | ||
0.14kj(kg・K) | 500℃ | ||
0.15kj(kg・K) | 1000℃ | ||
熱伝導度 | 167.5W/(m・k) | 20℃ | |
159.2W/(m・k) | 100℃ | ||
121.5W/(m・k) | 500℃ | ||
111.0W/(m・k) | 1000℃ | ||
92.98W/(m・k) | 2000℃ | ||
線膨張係数 | 4.5×10-6/K | 100℃ | |
4.6×10-6/K | 500℃ | ||
4.6×10-6/K | 1000℃ | ||
5.4×10-6/K | 2000℃ | ||
6.6×10-6/K | 3000℃ | ||
蒸気圧 | 5.33×10-6Pa | 2200℃ | |
6.67×10-4Pa | 2500℃ | ||
1.33×10-1Pa | 3000℃ | ||
電気比抵抗 | 55nΩ・m | 20℃ | |
72nΩ・m | 100℃ | ||
180nΩ・m | 500℃ | ||
330nΩ・m | 1000℃ | ||
650nΩ・m | 2000℃ | ||
1000nΩ・m | 3000℃ | ||
電気抵抗率の温度係数 | 4.6×10-3/K | ||
仕事函数 | 4.5eV | ||
ヤング率 | 403GPa | 25℃ | |
剛性率 | 155GPa | 25℃ |
注意点
保管
1. | モリブデン粉の3μm以下の微粉末は、消防法上第2類の可燃性固体に分類されており、消防法に基づく保管が必要である。これらの微粉末は、火炎を近づけたり、高温に保つと着火燃焼するので注意が必要である。 |
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2. | ブラック線や温間仕上げ板(鍛造、温間圧延)は、空気中に放置しても、酸化膜が強固に付いているため、比較的長期間保存に耐えるので保管が容易である。 しかし、熱処理、化学処理、又は電解研磨処理剤は酸化し易いので、これらの製品を1週間程度保管するには、湿度60%以下、温度28℃以下で、且つ化学薬品類から隔離された環境が必要である。デシケータや空調室(恒温恒湿)に保管し、表面を素手で触れないよう取り扱いに充分な注意が必要である。 |
3. | 冷間圧延板、機械加工仕上品も表面は酸化し易いので、乾燥雰囲気での保管が必要である。 |
汚染脆化
1. | ブラックワイヤのグラファイト層を水素炉で除去する際には、湿潤水素を用い1,300~1,500℃程度の処理を行う。又、グラファイトを除去した線(化研、焼鈍)の熱処理に際しては、特に前工程での油脂、汗類の付着防止あるいは、その除去を徹底する必要がある。 |
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2. | モリブデン板の熱処理をする際は還元雰囲気(乾燥雰囲気がベスト)を用い、850~950℃程度の処理を行う。又、酸化膜除去をした板(化学処理、冷間圧延、機械加工仕上)の場合は前工程での油脂,汗類の付着に注意しなくてはならない。 |
3. | 800℃以上での熱処理を行う場合(化学研磨、電解研磨、機械仕上)は、ニッケル、鉄、コバルト及びその合金との接触を避ける必要がある。 |
4. | 使用する炉の保守は常に行いきれいな状態を保つことが必要である。 ヒーター交換後の空焼きは充分に行うことも必要である。その他、ニッケル線、銅線等との熱処理の共用も避けなければならない。 |
機械加工
1. | 0.2mm以上の線・棒・板の折り曲げ、打ち抜き切断等の際は加熱加工をしたほうが加工し易くなる。加工温度は、600~800℃の範囲が目安であるが、素材の加工度によっても異なる。 |
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2. | クラックを生じた繊維組織の棒・板・線に圧縮、折り曲げ、ねじり等の力を加えると層状クラックは伝播する。切断や打ち抜きの際は切り口にクラックを入れぬようクリアランス等には注意が必要である。 |
安全上の注意
1. | 加工の際に粉塵を吸い込まぬよう防塵マスク、保護メガネを着用し、食事等の前には充分に手を洗う必要がある。 |
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2. | ティグ溶接時の先端加工は、研磨屑の吸入を避けるため、集塵をまめに行う。 |
その他の注意事項
1. | 完全に再結晶させた線・棒・板は、特性上、脆い傾向を持っているので、取り扱い上衝撃を与えないよう充分な注意が必要である。 |
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2. | 溶接には TIG 、 EB 、プラズマ等の方法を用いるが溶接部は非常に脆くなることを心がけて加工を行う必要がある。 |